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バセドウ病、TSHが低い

甲状腺機能亢進症とは

甲状腺甲状腺ホルモンの分泌量は、本来であれば甲状腺刺激ホルモン(TSH)によって適切に調整されています。しかし、甲状腺機能亢進症になるとホルモンの分泌が過剰となり、血圧が高くなる、脈が速くなる、汗をかきやすい、顔がほてる、手が震える、気分が落ち着かないといった様々な症状が引き起こされます。こうした状態は心臓や血管に負荷を与えるため、早期発見と治療が重要です。甲状腺機能亢進症は自己免疫の異常によって発症する疾患で、代表的なものにバセドウ病があり、その他は甲状腺炎や甲状腺腫瘍に分類されます。なお、甲状腺中毒症の多くは、甲状腺機能亢進症に該当します。

THSが低いとどうなる

TSH(甲状腺刺激ホルモン)が低いと指摘された場合、甲状腺の病気が隠れている可能性があります。特に代表的なのが「バセドウ病」などの甲状腺機能亢進症です。これは甲状腺ホルモン(FT3、FT4)が過剰に分泌されている状態で、体が過剰なホルモンに反応しないように、脳下垂体がTSHの分泌を抑えるため、血液検査でTSHが低下します。症状としては、動悸、体重減少、手の震え、汗をかきやすい、イライラしやすいなどが見られることがあります。
一方で、無痛性甲状腺炎や産後甲状腺炎など、一時的に甲状腺ホルモンが増える病気でもTSHが一過性に低下することがあります。このような場合、数週間〜数ヶ月で自然に回復することもあります。
TSHが低いだけでは診断はつかず、甲状腺ホルモン(FT3、FT4)の値を一緒に確認することが重要です。TSHが低くてもFT3・FT4が正常であれば、経過観察となることもあります。自覚症状の有無も判断の参考になります。
TSH低下を指摘されたら、当院までお気軽にご相談ください。必要に応じて、甲状腺超音波検査や自己抗体の検査など、より詳しい評価を行います。

バセドウ病

甲状腺機能亢進症の中で最も多く見られるのがバセドウ病で、発見者の名前に由来してこの名称がつけられています(バセドー病、バセドウ氏病とも表記されます)。この病気では、甲状腺組織を標的とする自己抗体が形成され、それが刺激となって甲状腺ホルモンが過剰に分泌されます。その結果、新陳代謝が異常に活発になり、動悸、多汗、手の震え、体のほてり、甲状腺の腫れなどが現れ、さらに眼球が前方に突出する特徴的な症状が見られることもあります。発症は女性に多く、全年代で見られるものの、特に20代から30代の若い世代に多い傾向があります。

バセドウ病の原因

バセドウ病の原因
甲状腺の細胞に存在するTSH受容体に対して異常な抗体が作られてしまうという、自己免疫の異常が原因です。この抗体が甲状腺を刺激することで、ホルモンの過剰な分泌が引き起こされ、全身に様々な症状が現れるようになります。

バセドウ病の症状

バセドウ病症状バセドウ病の特徴的な症状としては、甲状腺の腫れ、脈が速くなる頻脈、目が飛び出すように見える眼球突出などが知られています。しかし、これら3つの代表的な症状が全て現れるとは限らず、それ以外の症状だけが現れるケースも多いです。例えば、動悸や息切れ、手足の震え、発汗、体重減少、疲労感、気分の不安定、不整脈、むくみ、下痢などが見られることがあります。これらの症状は人によって程度も現れ方も異なります。
バセドウ病を放置すると、症状が急激に悪化し、甲状腺ホルモンが極端に増える「甲状腺クリーゼ」という重篤な状態に至ることがあります。これは複数の臓器機能が著しく低下する命に関わる危険な状態です。少しでも気になる症状がある方は、早めに当院へご相談ください。

全身症状 暑がり、疲労感、倦怠感、微熱、体重が減る
目元・首の症状 目つきの変化(鋭く見える)、眼球突出、甲状腺の腫れ
精神・神経系の症状 イライラしやすい、落ち着きがなくなる、不眠、集中できない
循環器系の症状 息切れ、動悸、頻脈、むくみ、心不全、心房細動
消化器系の症状 食欲の亢進、軟便・下痢、喉の渇き
皮膚症状 かゆみ、多汗、皮膚が黒っぽくなる、抜け毛
筋肉・骨格の症状 筋力が低下する、脱力感、手足の震え、周期性四肢麻痺、骨粗鬆症
月経に関する症状 月経不順、無月経、不妊症

バセドウ病に関連して起こる主な疾患・症状

眼球突出

眼球の後ろにある脂肪組織や筋肉にも甲状腺刺激ホルモン(TSH)受容体が存在しており、自己抗体の作用によって炎症やむくみが生じ、眼球が前方に押し出されるようになります。甲状腺ホルモンの過剰分泌を治療で抑えても、この眼球突出が改善しない場合もあり、角膜への損傷リスクが高まるようなケースでは、眼の突出に対する治療が必要になります。

眼瞼後退

瞼を動かす筋肉が緊張して収縮することで、上瞼が引き上がり、白目の上部が大きく見える状態になります。この状態が続くとドライアイを引き起こしやすくなるため、適切な処置が求められます。甲状腺ホルモンの異常が改善されると、眼瞼後退の症状も軽減する傾向があります。

複視

眼球を動かす筋肉に炎症や腫れが生じ、両目を正しく連動させて動かすことができなくなると、物が二重に見える「複視」が現れます。ただし、この症状は両目で見たときに限られ、片目で見ると正常に見えます。

心疾患

甲状腺ホルモンの過剰分泌により、心拍数の増加や血圧上昇が続くことで心臓に強い負担がかかり、不整脈や心不全を招くリスクが高まります。できるだけ早く治療を始めて、ホルモンバランスを整えることが心疾患予防に繋がります。

甲状腺クリーゼ

甲状腺機能亢進症を治療せずに放置した状態で、感染症や手術、抜歯などの強いストレスが加わると、急激に全身の症状が悪化する「甲状腺クリーゼ」を発症することがあります。この状態は、高熱、意識障害、頻脈、心不全、下痢などが生じ、命に関わる危険な状態に陥ることがあります。甲状腺ホルモン値を正常に保ち続けることが重要です。

周期性四肢麻痺

ホルモン異常が続いたまま暴飲暴食や激しい運動を行うと、血中のカリウム濃度が急激に低下し、全身の筋力が突然失われる「周期性四肢麻痺」を引き起こすことがあります。軽度であれば安静にしていれば回復しますが、治療が必要になる場合もあります。発症を防ぐためには、甲状腺機能の適切な管理に加え、糖質や塩分の摂取制限も有効です。特に若い男性に発症しやすい傾向があります。

高血糖

甲状腺ホルモンの異常が持続すると、血糖値も上昇することがあります。ただし、甲状腺機能が正常化すると血糖値も自然と改善されるため、甲状腺の治療が重要です。

骨粗鬆症

ホルモンの過剰分泌によって骨の代謝が促進されると、骨密度が低下し、骨が脆くなる「骨粗鬆症」を発症するリスクが高まります。特に閉経後の女性は女性ホルモンの減少により骨密度が下がりやすいため、さらに悪化しやすくなります。甲状腺ホルモンが正常化されることで、骨密度も回復に向かいます。
この他にも、爪の変形や皮膚の白斑、脛(すね)の部分に腫れやむくみを生じる「脛骨前粘液水腫」などが見られることがあります。さらに、悪性貧血、自己免疫性の結合組織疾患、多腺性機能不全症候群といった疾患を合併することもあります。

バセドウ病の検査と診断

血液検査を行います。甲状腺ホルモンであるFT3やFT4の値が基準値を超えて高く、甲状腺刺激ホルモン(TSH)の値が著しく低い場合、バセドウ病が疑われます。さらに、自己抗体であるTSH受容体抗体(TRAb)が陽性であれば、確定診断となります。

バセドウ病の治療

薬物療法、放射性ヨウ素(アイソトープ)治療、手術による甲状腺切除が選択肢となります。まずは、甲状腺ホルモンの合成を抑える抗甲状腺薬を用いた薬物療法から始めるのが一般的です。ホルモン値が正常化し、病状が安定してきた段階で、お薬の量を減らしていきながら、再発を防ぐための維持療法を継続します。
なお、抗甲状腺薬には、顆粒球減少症という副作用がごく稀に起こることがあります。重症化することもあるため、治療中は定期的な血液検査による慎重な経過観察が大切です。また、無顆粒球症に感染症を合併すると重い経過をたどることがあります。治療中に高熱が出た場合は、自己判断せず速やかに医療機関を受診してください。
お薬の効果が不十分な場合や、副作用の懸念が大きいケース、あるいは早期にホルモン異常を是正したい場合には、アイソトープ治療や切除手術を検討します。

バセドウ病と遺伝の関係

バセドウ病と遺伝の関係
バセドウ病の発症には遺伝的要因が関与していると考えられており、患者さまのお子様は、そうでない人と比べてバセドウ病を発症する確率が約6~10倍高まるとされています。ただし、これはあくまで発症リスクの一因であり、必ず遺伝するわけではありません。実際には、ストレスや感染症といった外的要因も発症に深く関わっているとされています。