慢性腎臓病(CKD)とは
腎臓は、腰の背面側に左右1つずつあるそら豆のような形をした臓器で、血液中の老廃物をろ過し、尿として体外に排出する重要な役割を担っています。そのろ過能力は、1日あたり約200リットルの血液に及ぶとされています。
この腎臓の機能が長期にわたって低下した状態を「慢性腎臓病(CKD:Chronic Kidney
Disease)」と呼びます。CKDは進行性の疾患で、放置すると腎機能が悪化するだけでなく、心血管疾患のリスクも高まり、命に関わる深刻な状態を引き起こす可能性があります。
このため、慢性腎臓病の進行を抑える、または進行をできる限り緩やかにするためには、正確な診断と適切な治療が欠かせません。日本腎臓学会では、こうしたCKDの管理に関して診療ガイドラインを策定しており、その中では、「原因疾患の有無にかかわらず、腎臓の現在の状態を正確に把握し、それに応じた治療を行うこと」の重要性が強調されています。
近年、このCKDが「新たな国民病」として注目されているのには、大きく3つの理由があります。
多くの人がかかる病気だから
日本では、約2,000万人、つまり成人の5人に1人がCKDに該当すると推計されています。腎臓の働きは加齢とともに少しずつ低下するため、今後、高齢化が進むにつれてさらに増えると考えられています。
放っておくと危険な病気だから

CKDが進行すると腎不全に至り、透析治療や腎移植が必要になることがあります。
また、たとえ軽度のCKDでも、心筋梗塞や脳卒中といった心臓や血管の病気のリスクが高まることがわかっています。
早めの対策で予防・進行を遅らせることができるから
生活習慣を少し見直すだけで、腎臓を守ることができます。
例えば、塩分を控えた食事や適度な運動を取り入れることが大切です。
また、適切なお薬を服用することで、腎臓の働きを保つ手助けをすることもできます。
慢性腎臓病の定義
慢性腎臓病(CKD)は、以下のいずれか、または両方の状態が3ヶ月以上継続している場合に診断されます。
- 糸球体ろ過量(GFR)が正常値の60%未満にまで低下している状態
- 尿検査・血液検査・画像診断などから明らかに腎障害が認められる状態
慢性腎臓病の検査
腎機能低下の早期発見には、尿検査や血液検査を実施します。これらに加えて、超音波検査などの画像診断を併用することもあります。
尿検査
尿検査では、尿中に含まれる蛋白質、糖分、血液成分、白血球、比重などを測定し、腎臓に異常がないかを確認します。各項目が示す状態は以下のとおりです。
蛋白尿
尿中の蛋白質が増加している場合、腎機能の低下が疑われます。ただし、健常な方でも、運動後や風邪などの影響で一時的に蛋白質が検出されることがあります
微量アルブミン尿
アルブミンは血液中の蛋白質の一種で、通常は尿に出ませんが、糖尿病の初期段階では尿中にわずかに現れることがあります。そのため、糖尿病の早期発見に役立つ重要な指標です。
潜血反応
尿に赤血球が混入している状態を指し、目に見えない血液(潜血)でも検出できます。この状態は「血尿」とも呼ばれ、腎炎などの疾患が隠れている可能性があるため、注意が必要です。
尿糖
血糖値が高い状態が続くと、尿中に糖が排出されるようになります。これが「尿糖」で、主に糖尿病の可能性を示す指標です。ただし、一時的な尿糖もあるため、血液検査との併用が推奨されます。
血液検査
腎臓は、老廃物の排出やホルモン分泌など、血液と深く関わる機能を担っています。血液検査では、腎機能や電解質のバランス、造血機能の異常を把握することができ、早期の腎障害の発見に有効です。
血清クレアチニン
筋肉から生じる老廃物であるクレアチニンの血中濃度を測定し、値が高くなると腎機能の低下が疑われます。腎臓病の重症度を表すeGFR(推算糸球体ろ過量)は、この数値をもとに算出されます。
血清尿素窒素(BUN)
蛋白質の代謝によって生じたアンモニアが肝臓で尿素に変換され、腎臓で排出されます。腎機能が低下すると、血中に尿素が蓄積し、この値が上昇します。
電解質・その他の検査項目
腎障害が進行すると、カリウム濃度が上昇する高カリウム血症をはじめ、ナトリウム、クロール、カルシウムなどの電解質異常が見られることがあります。また、腎臓から分泌される造血ホルモンの働きが低下することで、ヘモグロビンやヘマトクリットの値が減少し、腎性貧血を示すこともあります。
慢性腎臓病のステージ
| ステージ | 重症度 | 進行度による分類FR(eGFR)(mL/min/1.73㎡) | 治療方針 |
|---|---|---|---|
| ステージ1 | 腎障害あり(機能は正常) | ≧90 | 原因となる疾患の治療を行いながら、腎機能の維持と進行防止を目的とした管理を進めます。 |
| ステージ2 | 腎障害あり(軽度機能低下) | 60~89 | ステージ1の対応に加え、進行状況を評価しつつ、CKD悪化を防ぐための治療を強化します。 |
| ステージ3 | 中等度の腎機能低下 | 30~59 | 進行予防に加え、糖尿病や高血圧などの合併症への対応を並行して行います。 |
| ステージ4 | 高度な腎機能低下 | 15~29 | これまでの治療に加え、将来的な透析導入や腎移植に向けた準備を開始します。 |
| ステージ5 | 腎不全 | <15 | 尿毒症の症状に応じて、速やかに透析療法や腎移植を導入します。 |
慢性腎臓病の治療
慢性腎臓病(CKD)の治療は、まず原因となっている疾患への適切な対応が基本となります。例えば、高血圧があれば血圧のコントロール、糖尿病であれば血糖値の安定、自己免疫の異常がある場合にはその制御を目指します。これらの管理には、多くの場合薬物療法が中心となります。
加えて、CKDの進行を抑えるうえで欠かせないのが食事療法です。塩分の過剰摂取は血圧上昇を招き、蛋白質を摂りすぎることは腎臓への負担を大きくします。また、腎機能が低下している場合は、カリウムの摂取量にも注意が必要です。
とはいえ、過度な制限ばかりでは「食べる楽しみ」が損なわれてしまいます。当院では、CKDの状態や原因疾患の種類、治療内容、そして患者さま1人ひとりの生活背景まで考慮したうえで、無理のない薬物療法と栄養管理をご提案しています。
受診の大切さ
健康診断で「尿検査の異常(蛋白尿・血尿)」や「腎機能の低下(eGFR<60)」を指摘されたら、早めに医療機関を受診しましょう。
CKDの初期は自覚症状がほとんどないため、気づいたときには進行していた…ということも少なくありません。
腎臓を守るためには、医師や看護師だけでなく、患者さんご自身やご家族と一緒に取り組んでいくことがとても大切です。
私たちと一緒に、大切な腎臓の健康を守っていきましょう。