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橋本病、TSHが高い

甲状腺機能低下症とは

甲状腺甲状腺ホルモンの分泌量が不足することで、全身に様々な症状が現れる病態が甲状腺機能低下症です。主な症状には、顔や手足のむくみ、皮膚の乾燥、寒さへの過敏、手足の冷え、食欲不振、体重増加、気力や集中力の低下、脈が遅くなる徐脈、筋力の低下や肩こり・筋肉痛などがあります。
この疾患は自己免疫の異常によって発症することが多く、なかでも最も一般的なのが橋本病(慢性甲状腺炎)です。その他にも、甲状腺の手術後に機能が低下したり、脳下垂体の病気が原因となるケースもあります。さらに、服用中の薬剤によって甲状腺機能が抑制されることもあり、原因は様々です。

TSHが高いとどうなる?

TSH(甲状腺刺激ホルモン)が高いと指摘された場合、甲状腺の機能が低下している「甲状腺機能低下症」が疑われます。最も一般的な原因は「橋本病(慢性甲状腺炎)」で、自己免疫の異常により甲状腺の働きが低下し、甲状腺ホルモン(FT3、FT4)が不足している状態です。脳下垂体は甲状腺ホルモンの不足を補おうとしてTSHを過剰に分泌するため、血液検査でTSHが高くなります。
甲状腺ホルモンが不足すると、全身の代謝が落ち、疲れやすい、体重が増える、寒がり、むくみ、便秘、皮膚の乾燥、気分の落ち込みなどの症状が現れることがあります。ただし、初期には自覚症状が乏しいことも多く、健康診断などで偶然見つかることもあります。
また、甲状腺ホルモン(FT3、FT4)の値も合わせて確認することが大切です。ホルモンが正常であれば「潜在性甲状腺機能低下症」として経過観察になることもありますが、ホルモンが低ければ治療が必要となることがあります。
TSHの高値を指摘されたら、当院までお気軽にご相談ください。必要に応じて、甲状腺超音波検査や自己抗体の検査など、より詳しい評価を行います。

橋本病とは

橋本病は、自己免疫の異常によって体内で甲状腺を攻撃する抗体が作られ、甲状腺組織が慢性的に炎症を起こしながら破壊されていく病気です。その結果、甲状腺ホルモンの分泌が徐々に低下していきます。日本ではこの病気に関する最初の論文を発表した橋本策博士の名にちなんで「橋本病」と名付けられました。
主に30〜40代の女性に多く見られ、甲状腺の腫れやホルモン分泌の低下によって、様々な体調不良を引き起こします。

橋本病の症状

甲状腺の腫れ(甲状腺腫)

甲状腺全体が腫れることで、健康診断などで指摘を受けて発見されることがあります。腫れが目立たないこともあれば、外見からも分かるほど大きくなるケースもあります。バセドウ病による腫れに比べて、触ったときに硬くゴツゴツした感触である点が特徴です。

甲状腺ホルモンの分泌低下によって起こる症状

甲状腺ホルモンは、代謝や体温調節をはじめとする多くの機能をコントロールする働きを担っています。そのためホルモンが不足すると、全身に影響を及ぼす多彩な症状が現れます。

むくみ

朝起きたときに特に強く現れることが多く、時間の経過とともに軽快します。顔や手足だけでなく、喉や口の中にもむくみが現れ、声がかすれたり話しにくくなることがあります。

皮膚や髪の症状

代謝の低下により皮膚が乾燥し、かゆみや発汗の減少が起こります。また、髪が抜けやすくなる場合もあります。

寒がり・冷え

代謝の低下に伴って血流が悪化し、体温調節がうまくできなくなることで、手足の冷えや寒さを感じるようになります。徐脈も関与しています。

食欲不振にもかかわらず体重が増える

胃腸の働きが低下して食欲が落ちるにもかかわらず、代謝が下がってカロリー消費量が減少するため、体重が増加することがあります。加えて、むくみや便秘を伴うこともあります。

無気力・集中力低下

日中の強い眠気、過眠、思考の鈍さ、話しづらさ、物忘れが増えるなど、精神面・神経面の機能低下が見られます。

徐脈と心臓への影響

心臓の動きが鈍くなり脈拍が遅くなることで、心臓を覆う心膜に液体が溜まり、「心タンポナーデ」と呼ばれる重篤な状態を引き起こすこともあります。

筋肉症状

筋力の低下に加えて、慢性的な首や肩のこりを訴える方も多くいます。

月経異常

経血量が増加する「過多月経」が見られることがあります。

橋本病に関連して起こる主な疾患

無痛性甲状腺炎

甲状腺組織が炎症により破壊されることで、本来細胞内にあった甲状腺ホルモンが血液中に大量に漏れ出してしまう状態です。一時的に甲状腺ホルモンの値が高くなり、動悸や発汗などバセドウ病に似た症状を引き起こすことがあります。ただし、数週間から数ヶ月程度で自然に回復します。

橋本病の急性憎悪

甲状腺に急性の炎症が起こり、強い痛みや発熱などの症状が続くことが稀にあります。

悪性リンパ腫

慢性的な甲状腺炎の影響で、リンパ球が甲状腺内に集積し、稀にそのリンパ球が腫瘍化して悪性リンパ腫へと発展するケースがあります。

橋本病の検査と診断

超音波橋本病の診断には、主に血液検査と画像検査を用います。まず、甲状腺ホルモン(FT3・FT4)の値が基準より低く、同時に甲状腺刺激ホルモン(TSH)が高値であれば、甲状腺機能低下の可能性が示唆されます。さらに、抗サイログロブリン抗体(TgAb)や抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPOAb)のいずれかが陽性である場合、橋本病と診断されます。
併せて、甲状腺の大きさや形状、内部の状態を確認するために超音波検査を行い、腫れや腫瘍の有無、構造の変化を調べます。バセドウ病と同様に橋本病でも甲状腺の腫大が見られますが、橋本病では腫れが硬くゴツゴツしているのが特徴です。

橋本病の治療

治療方針は、血液検査による甲状腺機能の状態に応じて決定されます。たとえ甲状腺に慢性的な炎症が見られても、ホルモン分泌が正常であれば、基本的に治療は必要ありません。一方で、甲状腺ホルモンが不足していることが確認された場合には、内服薬でホルモンを補充する治療が行われます。

橋本病と遺伝の関係

橋本病の発症には遺伝的な素因が一定の影響を及ぼすとされています。それだけでなく、薬剤の影響やヨウ素摂取の過剰・不足、感染症などの環境要因、さらには出産前後に発症しやすいという女性特有の内因性要素も関係していると考えられています。
家族や親族に橋本病を患った人がいても、必ずしも遺伝するわけではありませんので、過度に心配する必要はありません。しかし、甲状腺機能低下を思わせる症状がある場合には、早めの受診が安心です。特に妊娠を予定している方で、甲状腺の病気が気になる方は、妊娠前のタイミングで検査や相談を受けることをお勧めします。